
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC221PR0S3A221C2000000/
「ファーウェイ、制裁乗り越え復活へ PHV・スマホが好調」
>> 中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の車載事業が好調だ。中国中堅自動車メーカーと共同で手掛ける電動車両は発売から50日で8万台の受注を獲得した。クラウドサービスなどの法人向けビジネスを含め、注力事業が軌道に乗り始めた。苦境に陥っていたスマートフォン事業も復活の兆しを見せている。米国の制裁から4年、完全復活が視野に入ってきた。
上海市中心部のショッピングセンターにある中国通信大手、華為技術(ファーウェイ)の大型店舗。スマートフォンやタブレットの最新モデルと並んで、来場者が熱視線を送る「大型商品」がある。
「M7」。ファーウェイが中国の中堅自動車メーカー、賽力斯集団(セレス・グループ)と共同運営する「AITO(アイト)」ブランドの多目的スポーツ車(SUV)だ。プラグをつないで充電するEV(電気自動車)に、発電用のエンジンを積んだ「レンジエクステンダーEV」で、中国の統計上ではプラグインハイブリッド車(PHV)に分類される。航続距離はEVモードで200km以上、エンジンによる発電を合わせると1200km以上に達するという。
9月12日に改良版を発売した直後から注文が殺到。11月には、発売から50日で受注が8万台を突破したと発表した。月間の販売台数が数千台から1万台前後と苦戦してきたAITOブランドにとって、最大のヒットになったのは間違いなさそうだ。
好調な引き合いを受けて、10億元(約200億円)超の資金を投入して増産体制の構築を急いでいる。それでも現地メディアの報道では1日当たりの生産台数は600~750台にとどまるもよう。販売員によると「M7の納期は2カ月待ちの状態だ」という。
M7が爆発的なヒットとなった背景には、ファーウェイによる積極的な関与がある。同社が2023年から本格化した「華為智選(ファーウェイ・スマート・セレクション)」と呼ぶビジネスモデルで、車両の開発だけでなく、販売やマーケティングを積極的に支援している。
センサーなどのコア部品やOS(基本ソフト)はファーウェイが提供。M7では同社が「ADS 2.0」と呼ぶ先進運転支援システムが導入された。高性能センサーのLiDAR(ライダー)やカメラなど合計27個のセンサーを搭載し、運転支援システムの精度を高めたという。
性能向上が図られたにもかかわらず、M7の価格は24万9800元(約500万円)と、従来モデルから4万元(約80万円)引き下げた。競合する新興メーカーの理想汽車(リ・オート)や上海蔚来汽車(NIO)に比べて競争力のある価格を打ち出した格好だ。戦略的な価格をひっさげ、中国国内のファーウェイの大型店舗で大々的に展開。「価格に加えて、ファーウェイブランドを活用したことがヒットにつながった」(中国で自動車関連コンサルティング会社を経営する辻村春樹氏)
最先端技術に頼らない
19年からの米政府による先端半導体などの輸出規制で、主力のスマートフォン事業が大打撃を受けたファーウェイにとって、車載ビジネスは新たな柱として強化してきた事業の1つだ。19年5月に事業部門を立ち上げたが、22年12月期の車載事業の売上高は20億元(約400億円)にとどまっていた。4年が経過し、新たなビジネスモデルがここに来て軌道に乗りつつある。